2017年5月21日日曜日

「夜半の海」に決まりました

5月13日に、福岡女子大学のカフェ、Nanの木で、高木秋子展のお疲れ様会をしました。

会場アンケート、これからの女子大での展示、展示の良かった点、こう工夫したらよかったという展と話は尽きませんでした。最後に作成した展覧会の動画を理科の実験室というこの上なく福岡女子大らしい場でみて、さらに展示の工夫について議論をしました。

そして「無題」の通称名も発表です。

「夜半の海(よわのうみ)」に決めました。
夜深い、真っ暗な静かな海。あたりに人工の光はなく、ただまっすぐな月明りだけが海を照らしている。そんなイメージです。最も作品が表す光景に近いと思い、選びました。

百人一首のある紫式部の歌 巡りあいてみしやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな
にも、イメージを寄せました。最後、私たちに紹介する間もなく、作者が雲に隠れてしまった作品なので。

展示等に用いる正式名称は「無題」のままなのですが、これから通称として「夜半の海」を使わせていただきたいと思います。

最後まで「ニンガチェの波間」と悩みました。ニンガチェはおそらく沖縄の2月のことかと思います。書いてくださったかたは沖縄出身の方でしょう。とても印象に残る言葉でした。

そのほかにお多くの方にご応募いただき、ありがとうございました。





2017年5月13日土曜日

【展示情報(予定)】交わるいと 広島現代美術館12/22から

高木秋子の次の本格展示は広島現代美術館で今年12月末からになります。

 
広島現代美術館 特別展 交わるいと

展示紹介
『糸や布、繊維を素材にした作品は、工芸や美術といったジャンルを問わずたくさんあります。本展では16人の作家に注目し、彼ら彼女らが糸や布と向き合うことで生まれた作品の数々を紹介します。タイトルとなっている「いと」は糸であり意図でもあります。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交わることで布があるように、ひとりの作家の意図ともう一人の意図とが交わることでどのような空間が生まれるのか。8組の展示空間をつくりだします。』


******************************

詳細はもう少し、会期が近づいて内容が定まってきましたらお伝えします。以下、竹口学芸員の展示のいとの言葉。

「福岡からも、工芸からも高木秋子の作品を切り離して展示してみたい。」

「6名の作家を2組ずつ組み合わせて、8コーナー設け、秋子さんも展示は現代の作家(チーム)と組み合わせてする予定」

「作家を選ぶ自分の基準として、『尋常でなく糸に時間を費やしている』というのがある。布という素材を使った現在作家はたくさんいる。でも、布という素材を使っているという基準ではなくてでなくて、糸というのに取りつかれたような人、そういう人のジャンルを超えた共演をしてみたい」

「ほとばしる情熱を内に秘め、小さな花の光と影を表現している と勿忘草の評価にある。その
情熱(狂気といってもよい)、影、そういったものが、感じ取れる展示にできるとよい」


写真はヌイプロジェクトの作品




2017年5月6日土曜日

【展示情報】九州芸文館 水辺にて

福岡女子大での展示は終わりましたが、高木秋子の作品展示は続きます。
来週からは九州芸文館です。

これからの季節にふさわしい水をテーマにした展覧会です。

水辺にて ―水をめぐる美術の世界 福岡県立美術館コレクション展


 【会期】 2017513日(土)~611日(日)
【会場】 九州芸文館 教室工房12
【入場料】 一般210円(160円)

詳細はこちら

高木秋子の作品は、片経浮織「清流」(後段中央) 他1点が展示されます。
山喜多二郎太の福岡の海も展示されます(*情報追記)

芸文館は広々とした空間、周辺の田畑と小川が美しく、これからの季節、お弁当をもって出かけるには最高の場所です。また芸文館内のレストランのランチもとても素敵です。ぜひ、お散歩に、ランチを楽しみに、そしてコレクションを楽しみにお出かけください。


工芸はそもそもの始まりからして社会性を持っている

よい天気ですね。無事、展覧会が終わり片付けながらぼんやり過ごしています。作った端からすぐ次、すぐ次と進んでいった秋子さんにはちょっと追いつきません。

広島現代美術館学芸員の竹口浩司さんの展覧会の感想がとてもありがたかったので、掲載許可をいただきブログにも転載します。

*******************************

先日ある工芸作家が語ってくれたこと。「作家は自らの表現に何らかの社会性を託さねばならない。つまり作品を社会に開くということだ。その意味では、工芸はそもそもの始まりからして社会性を持っている。なぜならそれらは用を満たしているのだから。しかし、そのことを意識してつくっている工芸作家は、近頃ではほとんど稀なように感じられ、とても遺憾である」と、そういうようなことだった。

昨日、福岡女子大学の図書館内で展示されている染織家・高木秋子さんの着物や資料を見て、その言葉を改めて胸に刻むことができた。絵描きを夢見ていた一人の女性が、戦争を通過して、織の道を志す。そのことを意味を、ぼくらは改めて考え直さないといけない。彼女が(福岡女子大学の前身である福岡県立女子専門学校で)学んだ家政学とはどういう学問であったのか、彼女がなぜしばしば沖縄の風物をモチーフにしたのか、彼女が風通織という織に見出したものはなんだったのか。

高木秋子さんのご遺族が中心になって企画された小規模な展示ではありながら、考えるところの多いものでした。会期は4月28日まで。関心のある方はぜひ。

*******************************
写真は昨年夏のフィンランド デザイン博物館です。写真撮影可能など、展覧会にあたって影響をうけました。
おしゃれな北欧デザイン、福祉の国は一方で1944年に多額の賠償金を背負って初めてようやく独立国家になった、資源も土壌も日照時間もすくない国でした。国が生き残るためものづくりをこころざしたのは、秋子さんがものづくりをこころざしたころと、同じ時期だったでしょう。
おしゃれな食器と展示してあるのは毒ガスマスク、マリメッコのワンピースと一緒にあるのは作業着です。ものづくりとは、デザインとはこの国にとってどういうものだったか。
忘れられない展示です。












自己紹介

2016年秋福岡県立美術館で開催されるコレクション展Ⅱ[山喜多二郎太と高木秋子展の個人的紹介ブログ。高木秋子の家族が書いています。管理人mai