この風通織は一見、1枚の布にみえますが、2枚の布が柄の部分で合わさっており、よく断面を見ると二重の袋になっているという織です。秋子さんは福岡県の浮羽地方で織られていた風通絣という絣の端切れをほどきながら考えて作っていったと聞いています。
最も基本的な平織では、2本の脚で、2本の踏木を交互に踏み、その合間に緯糸(よこいと)を通して織っていきます。しかし風通織では2本の脚で8本の踏木を32回パターン踏むと、9個の格子ができます。両面あるため16×2で32回です。さらに経糸は8つのそうこうという枠に間違いないようにセットしていかないればなりません。このそうこうは全部で2640本あります。
さらに晩年、糸はどんどん細くなっていきました。その分切れてしまうのです。
そこまでして作りたかったもの、表現したかったものは何だったのか。よく考えます。
風通織の写真 日本工芸会会長賞受賞作「勿忘草」(2007)の端切れ。正式に命名された最後の出品作。まんなかに糸がうつっています。